中卒が医師になろうと決断したわけ。
もちろん理由は一つじゃない。
さすがに一つの理由やきっかけでは助動詞のmustすら知らない状況から難関の医学部にチャレンジはできない。
自分なりにいろんなメリット・デメリットを考えて決断をした。
その頃を振り返ってみたいと思う。
まずは高校を17歳で辞めたころから。
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僕が入学した高校は県内最底偏差値の場所。
「名前を書けば合格できる」と言われていて、一部スポーツは強いけど大学進学する方が珍しがられるようなところ。
さらに言えばその高校には「特進」「進学」「普通」とコースがあった。僕は専門学校すら受験する人が珍しい「普通」コース。
中学時代は授業にもまともに出ずにギターを弾いたり、勉強もせずに遊びまわってたので、一時は高校に行けるのかと周りの大人たちから危ぶまれていたが、なんとか合格できた。
ただ、もともと高校に行こうと決めた理由が
- 当時付き合っていた子と一緒に通うため
- 高校でボクシングをするため
という二つだったため彼女に振られボクシングを怪我で続けられなくなったタイミングで通い続ける意義をすぐに失ってしまった。
また、17歳だった自分の夢は"社長になること"だったので、「学歴なんか関係ない」と辞めるのにはほとんど抵抗がなかった。
辞めた日の事を覚えている。
当時の担任の先生に辞めたい旨を伝えると
「たしかにあんたは辞めた方がいいね」
と言われた。あの一言ですんなり辞めれたので感謝です。
そんな感じで高校を辞めてそれから1ヶ月ぐらいは遊びまわった。
一応スポーツは続けていたがもはや練習態度もいい加減になっていた。
遊び続けてお金が尽きた頃に地元の先輩の誘いで肉体労働の仕事を始める事になった。
隣県での仕事だったのでここで実家を出て自分のお金で生活するようになる。
(この話は後に詳しく。)
この仕事を通じて僕の考えや人生が大きく変わる事になる。
17歳の夏の終わり
この時期に家を出て荷物を背負ってボロ原付で隣の県に向かった。
自分1人で生きていくということで大人になった気分になりワクワクしたのを覚えている。
紹介してくれた先輩と二人で会社に入ったが、若かった為か現場のおじさん達にすごく歓迎してもらった。
年配の方々が多くよく缶コーヒーなんかをご馳走になった。あるときはお金のない自分を不憫に思ってか帰りにスーパーで5000円分くらい食料品を買ってもらった事もあった。
ただ、当時勤めていた仕事は肉体労働の中でも非常に重労働。
日勤と夜勤が入り乱れているのでメンタル的にもキツかった。
「一緒に頑張ろうや!」と仕事を紹介してくれた地元の先輩は1ヶ月で早々と消えていった。
僕自身それまでにも漁業や解体業、厨房のバイトなどいくつかの業種を経験していたが、たしかに最もハードな仕事だった。
しかし、皆さんに可愛がってもらったおかげで僕自身もなんとか職場に貢献したいと必死に頑張ることができた。
この職場で少年時代からこの仕事一本の人、刑務所上りの人、職を転々としてる人、他にも本当に色々な人と出会えた。
交通誘導員の方とは夜勤中話したことを覚えている⇩
職場で出会った元自衛隊(強面 推定180㎝90Kg)の人にいい意味で目を付けられたのか、徹底教育してもらい徐々に仕事に対する姿勢が変わっていった。
例えばタイムマネジメントの重要性を学んだ。
具体的には
・誰よりも早く集合場所に行く
・コンビニは1分以内で済ませる
・作業中は1分も無駄にせず行動する
また、率先して仕事を貰いに行く積極性や作業効率化の視点なども勉強した。
これらは先程の元自衛官の方にご指導頂き身についたもの。
医師になった今でもこの教えは役立っており、自分の強みだと思っている。
当時の自分の強みは体力とやる気だと思っていたのでそこを思いっきり売りにした。初めて正社員として会社に入って自分のお金で生活して一人の社会人として扱われることで、今まで大した努力もせずに過ごしていた自分がいかに甘く未熟で、狭い世界で生きていたかに徐々に気づき始めた。
価値観が変わり、自分の好きなように生きるだけではなく社会とどう関わっていくか、どう強みを売っていくかについて考えるようになった。
そんな感じで仕事をしていると上の人たちから評価していただいていろんな方からも名前を覚えていただいたりお声掛けしていただくようになった。
当時の僕の会社は色んな会社の下請け作業を頂いていたいわゆる何でも屋的な会社。そんなある日、上の人から不動産部署に移って欲しいと言うお話をいただき二つ返事でOKした。
いろんな仕事を若いうちに経験しておきたいと考えたのとスーツを着て仕事をしてみたかった。
不動産部署に移る条件として宅地建物取引主任者(宅建)の資格を取れと言われたので勉強を開始した。
宅建は有名資格⇩
宅建というのは不動産取引に必要な資格で国家資格。
宅建は一定数有資格者がいないと営業継続ができないので真面目で若い自分に取らせておこうと考えたんだと思う。ということで宅建取得のための勉強が始まった。
そこで久々(本気でやるのは小学校ぶり)の勉強が案外楽しかったのと、当時の職場ではあまり勉強している人はおらず、これは自分の強みにできるかもしれないと感じた。
結果的にこの体験により勉強をして可能性を広げるという選択肢が増えた。
これが後に医師を目指す事になる大きなベースになる。
ここから医師を目指す事になった三つの理由を書いていく。
一つ目
これは金銭的、社会的な理由。
これらがないと言えば嘘になるので正直に書く。
当時の僕がどれだけお金がなかったかの説明のために日付入りの具体的な話をする。
10/1から仕事に就いて、これでお金に困らないぞと気楽に過ごしていたが思わぬアクシデントが起きた。
20日締めの翌月末払いだったので給料が11/30まで振り込まれなかったのだ。悠長にお金を使っていたせいで10月後半ごろから約1ヶ月地獄の貧乏生活を送る事になった。
どんな生活だったかというと
例えばある日の朝飯はバナナ1本、昼食は二段弁当白米のみ+コンビニのおかず一品、夕食は白米大盛りともやしの塩コショウ炒め。
外仕事は色々現場が変わるため昼飯はコンビニが多い。
さらに現場車で移動するんで集団行動。みんな当たり前のようにコンビニに行く。
コンビニは意外と高級品なので弁当と飲み物を買うと1000円を超える。なので購入品はおかず一品だけにとどめていて、お気に入りはミートボールだった。
お米は会社からも先輩からも無限にもらえたので2段弁当に敷き詰めて水道水と一緒に現場に持っていった。
特にもやしはよく買っていてディスカウントショップで38円のもやしと19円のもやしがあったんですが迷わず19円の方を選んでるくらいのスタンスで暮らしていた。
当時の仕事は土砂降りでも作業するんで雨合羽や長靴を履いて作業するが、それらも買えずびしょ濡れで凍えながらエンジンで暖をとって凌ぐみたいな夜勤もあった。
こんなエピソードが他にも沢山あるぐらい貧乏を味わった。
この経験で良かったことはお金がないと何もできないという事実を肌感覚で学べたこと。この体験でお金には絶対苦労したくないという思いが強くなった。
医師免許があれば人生においてある程度の生活は担保される。
これが医師免許を取ろうと思った一つの理由。
色々活かせる医師免許⇩
二つ目
これは感情的な理由から。
自分自身や仲間が事故で患者の経験があり、医療の受け手側の体験をしていたから。
人の人生を左右する健康や生命にダイレクトに関わる医療職はいいなと思った。
事故について少し触れると
16歳のある日の夕方、自宅で過ごしてたら先輩に呼び出されたので急いでバイクでその場所へ向かった。
その道中。
医大の目の前の交差点で2トントラックと正面衝突して跳ね飛ばされてしまった。何メートル飛んだかは覚えてないですが、履いてた靴が両方脱げ、手首にはめていた数珠がはち切れてたんでなかなかの衝撃だったと思う。
あっと思った時には目の前に壁(トラック)があり気付いたら人だかりに囲まれて倒れてた。
医者らしき人に「大丈夫か!?」と言われて答えようとしても全身への衝撃が強すぎてからか声が出なかったのを覚えている。
そのまま医大が目の前にあるのに救急車で運ばれてERに。幸い後遺症の残るような怪我もなくなんとか無事だったが、医者には「普通なら致命傷を負う」と言われたぐらいだったので今思うとゾッとする。
医療にお世話になった経験が自分の中でインパクトを残っていたんだと思う。
三つ目
これは自分の強みを活かしたい、自分を試したいという理由から。
宅建の勉強で自分自身の強みの一つに勉強があるかもしれないと感じてから勉強系の仕事に就こうと考えるようになった。不動産鑑定士や弁護士、医師など難関資格を調べることが多くなり、徐々に憧れるようになった。
その中で医療に興味があって、医師という選択肢が有力になった。
また、中卒が勉強の世界でどこまで通用するのか自分を試してみたくなったという思いもあったと思う。
この時期に最終的に考えていた選択肢は
・自衛隊などでお金をためて何か分からないけど起業
・宅建を活かし不動産業界で修行して最終的に独立
・勉強の道を選んで医学部・医師を目指す
であったが
最終的に今まで述べた三つの理由を総合して
医学部に入って医師を目指すことに決めた。
これが中卒だった自分が医師を目指すようになる流れ。
全てを書けたわけではないが大まかな流れはこんな感じ。
ここまで駄文を読んでいただいた方の
何らかの行動のきっかけになれば本当に嬉しい。
そこからは高卒認定を1年、さらに2年半書けて医学部に入学した。
この辺の話については各種媒体で散々述べているので割愛。
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以上の流れ、理由から医学部に入学し今は医師として働いている。
医学部を目指し始めた時は夢のような世界を想像していたが、入ってみると案外普通だった。
この10年を振り返るとバイク事故や高校中退、肉体労働、受験勉強から医師国家試験など色んなことがあった。
しなくてもいい無駄な時間、苦労や体験をしていると言われる事もあるが自分自身では自分の人生に間違いなく必要な経験だと考えているし何より楽しかった。
起きた経験をマイナスに捉えるかプラスに捉えるかでその経験が無駄になるか人生に活かせるかは変わると思う。
以上、 中卒が医学部受験を決めた理由についてでした。
浪人時代読んで感銘を受けた本⇩